筋力低下
筋力低下はなぜ起こる?
原因や予防法を解説
筋力低下の原因には運動不足だけではなく、加齢や食生活などさまざまな理由が挙げられます。
筋力が低下すると、疲れやすくなり活動量が減る、基礎代謝が低下し太りやすくなるといった影響が出てき
ます。
しかし、適切な対策をすることで筋力低下を防ぎ、また筋力を強化することもできます。
本記事では、筋力低下を防ぐために効果的な初心者でも取り組みやすい筋トレメニューも紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
1 筋力低下の原因
筋力が低下する原因には、年齢を重ねることによる筋肉の衰えや運動不足、たんぱく質不足、糖尿病などの疾患による影響など、さまざまなものが挙げられます。
まずは筋力低下の原因を知り、ご自身に当てはまる部分がないかチェックしてみましょう。
加齢による筋肉の衰え
筋力低下の代表的な原因のひとつが、加齢による筋肉の衰えです。
特に下肢の筋肉は衰えるスピードが速く、20歳から筋肉量が低下
しはじめて80歳を迎えるころには30%ほど低下すると言われてい
ます(1)。
男性は、女性に比べてもともと筋肉量が多いため、一般的には男性の方が加齢による筋肉量の減少率が大きいと言われています。
加齢による筋肉の衰えは、単なる身体活動量の減少だけでなく、筋肉を作る成長ホルモンやテストステロンの分泌量の減少、神経からの刺激が筋肉に届きづらくなるなど、複数の要因が重なり合って起きると言われています。
(1)参考:谷本芳美ほか(2010)「日本人筋肉量の加齢による特徴」『日本老年医学会雑誌』第47巻1号
生活習慣
筋肉は使わなければ衰えていくため、筋力が低下する原因には生活習慣も大きく関わってき
ます。
例えば、座りっぱなしなどで普段から運動不足の人は筋肉を使う機会が少ないため、筋力が低下しやすくなります。
骨折などで一定期間足を動かせなかった人の下半身が次第にやせ細っていくのも、筋力低下の分かりやすい例と言えるでしょう。
また適度に身体を動かしていても、筋肉の材料となるたんぱく質を食事で摂取できていない場合は筋肉を十分に作ることができず、筋力低下につながります。
つまり、適度な運動とたんぱく質を意識したバランスの取れた食事をはじめとした正しい生活習慣が定着していなければ、筋力は次第に低下していくのです。
疾患による影響
糖尿病などの疾患の影響で、筋力の低下につながる場合もあります。
糖尿病の場合は体内の血糖を調整するホルモンの一種であるインスリンの働きが低下し、筋肉に十分な血糖を取り込みづらくなります。
血糖がうまく取り込めないと、筋肉はエネルギーを効率的に利用できず、筋肉の分解が進みやすくなります。
また、高血糖の状態が続くと筋肉の合成が抑制されて分解が優位に働き、筋力が次第に低下する場合があります。
2 筋力低下がもたらす影響
筋力が低下すると、疲れやすくなって身体活動量が減る、基礎代謝が下がり太りやすくなるなど、さまざまな影響が出ます。
筋力低下がもたらす影響はどれも普段の生活に直結するため、生活の質(QOL)に大きく関わるでしょう。
この章では、筋力の低下がもたらす影響を詳しく説明していきます。
疲れやすくなり活動がより減少する
筋力が低下すると、身体が疲れやすくなって活動が減少するといった影響をもたらします。
例えば、階段の上り下りや普段の立つ・座る動作、歩くことでも疲れを感じるようになるでしょう。
筋力が低下して何をするにも疲れを感じようになってしまうと、身体活動量も減ってさらに身体を動かさなくなるといった負のサイクルに陥ってしまいます。
このように筋力が低下することで疲れやすくなるだけでなく、身体活動量も減少するといった影響が出るでしょう。
基礎代謝が下がり太りやすくなる
筋力が低下することは、基礎代謝が下がって太りやすくなることにもつながります。
基礎代謝とは、普段何もしていないときのエネルギー消費のことで、呼吸や体温維持、心臓の拍動といった内臓の動きに必要な最低限のエネルギー消費のことです。
基礎代謝量は1日の総エネルギー消費量の約60%を占めており、そのうち筋肉によって消費
されるのは約20%と大きな割合を占めてい
ます(2)。
そのため、筋肉量が減って筋力が低下すると基礎代謝も低下して消費エネルギーが少なくなるため、太りやすい身体になる可能性があります。
(2)参考:田中茂穂(2009)「総論 エネルギー消費量とその測定方法」『静脈経腸栄養』第24巻5号
姿勢が崩れやすくなる
筋力の低下は、姿勢の崩れにも大きく関係しています。
筋肉は、重い物を持ち上げる、走るなど身体を「動かす」役割がイメージされやすいですが、同時に正しい姿勢を「保つ」役割も担っています。
特に抗重力筋(腹筋・脊柱起立筋・大腿四頭筋など)と呼ばれる筋肉は重力に抗って身体を支えており、普段私たちが特に意識せず真っすぐに立つことができているのも抗重力筋の働きのおかげです。
そのため、筋力が低下すると抗重力筋の働きも衰え、姿勢も崩れやすくなるでしょう。
膝や腰の関節への負担増
筋力が低下することで膝関節や腰への負担が増加し、膝痛や腰痛の原因になる可能性があり
ます。
例えば、大腿四頭筋や臀筋群などの下半身の筋力が低下すると、階段の上り下りや立つ・座るなど日常生活の動作において膝関節への負担が増加します。
膝関節への負担が増すと、膝関節内でクッションの役割を担っている軟骨がすり減り、変形性膝関節症のリスクが高まり
ます。
腰部でも同様に、脊柱起立筋や腹筋などの姿勢を支える抗重力筋が衰えて筋力が低下すると、正しい姿勢を保てず腰椎(腰の骨)への負担が増加し、腰痛のリスクが高まります。
筋力の低下は膝関節や腰への負担を増加させ、膝痛や腰痛にもつながります。
3 筋力低下を予防する方法
筋力は加齢や運動不足などさまざまな原因で低下しますが、運動や食事の改善などで筋力低下を予防することが可能です。
本章では、具体的な筋トレメニューや意識的に摂りたい栄養素を紹介しますので、日々の生活にぜひ取り入れましょう。
筋トレを取り入れ筋肉量を維持・アップさせる
筋力低下の予防、そして向上には、筋トレが欠かせません。
筋トレは継続的に取り組むことで効果が期待できるため、まずは継続して取り組めるよう、無理のない強度・筋トレメニューで実践することがポイントです。
特に筋トレ初心者や高齢者は、難易度が高い筋トレを行うと怪我の原因にもなるため、十分に注意して実践しましょう。
ここでは、筋トレ初心者や高齢の方でも簡単に取り組める筋トレメニューを2つ紹介します。
撮影協力:SIXPADオフィシャルトレーナー KENTA
■ ニーアップ
ニーアップは、下半身の筋力低下予防に効果的なトレーニングのひとつです。
特に太ももの前面にある大腿四頭筋や股関節まわりの筋肉を強化することは、日常生活の歩行や立ち座りの動作をスムーズにする効果が期待できます。
またインナーマッスルの腸腰筋も鍛えることができるため、安定した歩行・転倒予防にも効果的
です。
ニーアップは座ったままでできることから比較的難易度が低く手軽に実践できるため、運動不足が気になる方や中高年層におすすめです。
-
1.
背もたれから背中を離した状態で、椅子に浅く座る。
※手は椅子の座面を持って身体を安定させましょう。 -
2.
骨盤は真っすぐ立てた状態をキープし、片方の太ももを上げ下げする。
※太ももを上げるときは、ももをお腹に近づけるイメージで行いましょう。 -
3.
交互に20~30回、3セット行う。
■ カーフレイズ
カーフレイズは、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)を中心に鍛えるトレーニングです。
ふくらはぎを鍛えることは、歩行や立ち上がりなどの日常生活動作はもちろん、ジャンプ動作などのダイナミックな動作をスムーズに行える効果も期待できます。
またふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれており、血液を全身に送り出すポンプのような機能を果たしているため、ふくらはぎを鍛えることはむくみや冷えの予防にも効果的です。
カーフレイズは誰でも簡単に実践できるトレーニングですが、特に下半身の安定性を高めたい中高年層や立ち仕事やデスクワークなどで足のだるさを感じる方におすすめです。
-
1.
足は腰幅に開き真っすぐ立つ。
-
2.
上体がぶれないように、つま先で立つ。
-
3.
1~2を10回×3セット行う。
筋肉を増やすために必要な栄養素を摂る
筋力低下の予防には、筋肉を増やすために必要な栄養素を積極的に摂取しましょう。
なかでも、たんぱく質は筋肉を構成するうえで欠かせない栄養素のひとつです。
たんぱく質は、肉・魚・卵・大豆製品などに多く含まれており、これらの食材をバランス良く摂取することで筋肉の合成が促進されます。
また、たんぱく質と合わせてビタミンDの摂取も意識するといいでしょう。
ビタミンDは魚・きのこ・卵などの食材に含まれており、細胞内のビタミンD受容体を介して筋肉にも働きかけ、筋たんぱく質の合成を促進すると考えられています。
食事だけで多くのビタミンDを摂取することは難しいですが、ビタミンDは日光を浴びることで体内生成することができるため、起床時にカーテンを開けるなど、普段の生活で日光を浴びることができるよう意識するといいでしょう。
4 筋力低下をチェックする方法
筋力低下をチェックするためには、「立ち上がりテスト」と「ふくらはぎ輪っかテスト」を活用しましょう。
・ 立ち上がりテスト
椅子に浅く腰かけた状態で、腕の力を使わずに立てるかを確認するテストです。
スムーズに立ち上がれない、腕に力を使わないと立ち上がれない場合は下半身の筋力が低下している可能性があります。
・ ふくらはぎ輪っかテスト
椅子に腰かけて膝の角度を直角にした状態で、ふくらはぎの太さを測るテストです。
両手の親指とひと差し指を合わせて輪っかを作るイメージで、ふくらはぎのいちばん太い部分を囲ってみましょう。
輪っかとふくらはぎに隙間ができる場合は、筋力が低下している可能性があります。
5 筋トレができなかった日は、ながらトレーニングの「SIXPAD」で
筋力低下を予防するには筋トレに継続的に取り組むことが大切ですが、思うように実践できない日もあるでしょう。
そんなときは、本記事でご紹介した筋トレと合わせて、筋肉を鍛えることができるSIXPADを活用することもおすすめです。
筋肉に直接アプローチできるEMS(筋電気刺激)でトレーニングをすることで、鍛えたい箇所に集中的にアプローチすることが可能です。
本やテレビを読むとき、家事をしているときに「ながら」で手軽にトレーニングができるため継続しやすく、激しい運動が苦手な方にもおすすめ
です。
6 まとめ
本記事では筋力低下の原因や筋力低下が日常生活にもたらす影響、そして筋力低下を予防するための対策方法について紹介しました。
筋力低下は運動不足や加齢などさまざまな原因で起こりますが、運動や食事の見直しをすることによって予防できるだけでなく、筋力を強化することも可能です。
ただし、効果を感じるためには継続して取り組むことが大切なので、工夫をしながら普段の生活に取り入れていきましょう。