高齢者の転倒予防
高齢者の転倒を予防するには?
転倒を招く4つの要因と防止策を解説
高齢者が転倒するとけがや骨折などのリスクが高まります。場合によっては命に関わるため、元気なうちからの転倒予防策が重要です。
この記事では、転倒しやすい高齢者の特徴や対策、転倒予防トレーニングについて解説します。高齢者の転倒予防について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
1 高齢者の転倒は命にかかわることもある
高齢者の転倒事故は、けがや骨折のほか、場合によっては命に関わる可能性もあります。
2022年の国民生活基礎調査によると、介護が必要となった主な原因の第3位が骨折・転倒という結果でした(1)。
また、2023年の人口動態調査では、65歳以上の「転倒・転落・墜落」での死亡者数は11,058人でした(2)。スリップやつまずき、よろめきでの転倒が多くを占めています。
転倒事故による生活上のリスクを避けるためにも、高齢者の転倒予防は重要です。
(1)参考:2022年(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
(2)参考:人口動態調査|e-Stat 政府統計の総合窓口
2 転倒しやすい高齢者の特徴・要因
転倒しやすい高齢者の特徴や要因は以下の通りです。
- バランス機能が低下している
- 視力が低下している
- 病気や薬によるふらつきがある
それぞれの特徴や要因について、詳しく解説します。
バランス機能が低下している
高齢者は特徴的な歩き方をするため、転倒しやすくなる可能性があります。加齢により筋力やバランス能力が低下することが要因です(3)。
高齢者の歩行の主な特徴を紹介します。
- 姿勢の前傾
- 歩幅が狭くなる
- 足が上がりにくい(4)
このような状態になると、転倒し怪我や骨折のリスクが高まります。
視力が低下している
高齢者の転倒要因として、視力の低下が考えられます。加齢や病気による視力低下で段差が見えず、つまずいてしまうためです(3)。
ほかにも、加齢による色の判別能力が低下し、段差が見えにくいため転んでしまう可能性もあります(5)。
視力の問題を抱えている高齢者は、転倒事故に注意したほうが良いでしょう。
病気や薬によるふらつきがある
高齢者の転倒には、病気や薬によるふらつきが要因の場合も考えられます。
たとえば、起立性低血圧や不整脈などの循環器系の病気や、認知症や末梢神経障害などの神経系の病気により、ふらつく可能性があります。また、骨粗しょう症や変形性脊椎症なども転倒の要因です。
服用する薬でふらつきが起こり転倒する場合もあります(6)。
3 高齢者が転倒を繰り返す場合の対策
高齢者が転倒を繰り返す場合、早急に適切な転倒防止策をとる必要があります。ここでは、家の中と外出時の転倒防止策について、詳しく解説します。
家の中での転倒防止策
家の中でできる転倒防止策は以下の通りです。
- 転倒の原因となるものを取り除く
- 手すりやスロープ、滑り止めをつける
- 足元に照明をつける
それぞれの対策について詳しく解説します。
-
1.
転倒の原因となるものを取り除く
家の中では、転倒の原因となるものを床に置かないようにしましょう。すでに床にあるもので転倒の原因となりそうなものは取り除きます。
転倒の原因となるものと対策方法を紹介します。転倒の原因となるもの 対策方法(7)(8) 電源コード ・壁に設置する
・歩く動線以外の場所(部屋の奥など)にまとめるカーペット・ラグ ・カーペットの端を固定する
・滑り止めを使用する
・何度もひっかかる場合は取り除く新聞紙・雑誌 ・床に置かない -
2.
手すりやスロープ、滑り止めをつける
高齢者がよくつまずく場所や、転倒が予測される場所に対策グッズをつけると転倒防止に役立ちます。以下のような場所に、対策グッズを設置すると良いでしょう。
- 段差のあるところ(階段や部屋の入り口など)
- 玄関
- 廊下
- 浴室
- トイレ
たとえば玄関には手すりを設置し、段差が高い場合には上がりやすいよう踏み台を設置します。部屋の入り口に段差がある場合は、段差を解消するスロープをつけ、つまずかないようにします(7)(8)。
滑り止めや室内の段差を解消するスロープはホームセンターや通販で入手可能です。要支援および要介護認定を受けた方の場合、手すりやスロープの工事で給付が受けられる場合もあります(9)。 -
3.
足元に照明をつける
夜間にトイレに行くときでも歩きやすいよう、廊下や階段の足元に照明をつけると転倒予防になります。近くに電源がない場所では、乾電池式のセンサーライトを取りつけると良いでしょう。
(9)参考:福祉用具・住宅改修|厚生労働省
外出時の転倒防止策
外出時は思わぬ場所での転倒が考えられるため、あらかじめ転びやすい場所を確認しておきましょう。具体的な転倒予防策は以下の通りです。
- 濡れた場所に気をつける
- 段差や車止めなどに注意する
それぞれの対策について具体的に解説します。
-
1.
濡れた場所に気をつける
高齢者が濡れた場所を歩く場合、特に注意しましょう。滑りやすい場所では、転倒リスクが高まるためです。
雨が降ったあとの路面はもちろん、濡れたマンホールや落ち葉も大変滑りやすい状態です。できるだけ乾いた場所を歩くか、マンホールや落ち葉を避けて歩くようにしましょう。
店舗内でも床が濡れていると転倒の危険があるため、お店の中でも油断せず、床の状態を確認しながら歩きましょう。 -
2.
段差や車止めなどに注意する
高齢者は筋力や視力低下などのため、歩道の段差や駐車場の車止めでつまずく危険もあります。そのような場所では、足元を確認しながら慎重に歩くよう心がけましょう。
4 高齢者におすすめの転倒予防トレーニング
高齢者の転倒は、トレーニングで予防できる可能性があります。高齢者でも取り組みやすいトレーニングは以下の通りです。
- スクワット
- 片足立ちトレーニング
- ステップ運動
- 足踏み運動
- 足指を鍛えるトレーニング器具を使う
それぞれのトレーニング方法について、具体的なやり方を解説します。
■ スクワット
スクワットは足の筋肉を鍛える効果的なトレーニングです。基本的には立ったままひざを曲げ、ゆっくり伸ばす動作を繰り返します。
ふらつきが気になる場合は、椅子に手をかけた状態で行ってもかまいません。それでも難しい場合は、机に手をかけ椅子から立ったり座ったりする動作を繰り返すのも良いでしょう。
■ 片足立ちトレーニング
片足立ちトレーニングは、バランス感覚を高める運動です。床の上でもできますし、座布団の上で行ってもかまいません。ただし、座布団の上で行うときは、テーブルに手を置くなどして安全に配慮しましょう。
具体的なやり方を紹介します。
-
1.
片足だけかかとを上げ、10秒キープする
-
2.
10〜15回程度行う
よろけるときは、テーブルなどに手を添えると安全です。
■ ステップ運動
足を前後に動かすステップ運動は、立ったままでも、椅子に座ったままでもできる転倒予防トレーニングです。具体的なやり方は以下の通りです。
-
1.
左足を前に出したあと、右足を前に出す
-
2.
左足を後ろに下げたあと、右足を下げる
-
3.
この動作を繰り返す
左足を前に出すタイミングで、思いつく言葉を言いながら行うと効果的です。
■ 足踏み運動
足踏み運動も、体力に合わせて姿勢を変えて取り組めるトレーニングです。立ったままで難しい場合は、椅子に座ったまま取り組んでもかまいません。
具体的には、できるだけももを高く上げながらすばやく足踏みしましょう。前述したステップ運動と同様に、思いついた⾔葉を発しながら行うのがおすすめです。
■ 足指を鍛えるトレーニング器具を使う
これまで紹介したトレーニングが難しい場合、足裏や足指を鍛えるトレーニング器具の使用も検討してみましょう。
たとえば、足裏を刺激する器具やトレーニングチューブ、足用のEMSトレーニング・ギアなどがあります。
高齢者でも簡単に操作できる機器を取り入れると、運動を習慣化できるのでおすすめです。
5 高齢者の転倒に関するよくある質問
ここでは、高齢者の転倒に関するよくある質問についてまとめました。
高齢者が転倒して起き上がれない場合の対処法は?
無理に起こそうとせず、救急車を要請しましょう。起き上がれない高齢者を無理に起こそうとすると、介助者もバランスを崩す恐れがあるため危険です。
頭を打ったり骨折したりしている恐れもあるため、安全な場所であれば無理に動かさず、専門家の指示をうけたほうが良いでしょう。
高齢者が転倒したら何科を受診すればいいの?
ぶつけた箇所や痛みのある場所に応じ、整形外科や脳外科などを受診しましょう。判断に迷う場合は総合病院で相談したり、地域の医療相談ダイヤルで相談したりして、専門家の判断を仰ぎましょう。
6 高齢者の転倒予防には筋力トレーニングが効果的
高齢者は1回の転倒で介護が必要なほどのけがになる恐れがあります。家の中や外出時の対策とともに、普段からトレーニングに取り組み転倒を予防しましょう。
今回紹介した転倒予防トレーニングを参考に、取り組みやすいものを日常生活に取り入れてみてください。