尿漏れの原因

尿漏れの原因

女性の尿漏れの原因とは?

尿失禁の対策方法も合わせて紹介

女性の尿漏れ(尿失禁)の種類として多いのは腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁のふたつと言われています。
本記事では尿漏れの原因を紹介したのち、効果的な対策方法として骨盤底筋のトレーニングを紹介していきますので、
尿漏れに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
症状がひどい場合は、医療機関の受診も検討しまし
ょう。

1 尿漏れ(尿失禁)の種類と症状は?

尿漏れ(尿失禁)は、「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「溢流性尿失禁」「機能性尿失禁」「混合型尿失禁」の5つに分類されます。
このなかでも女性に多いのは、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁のふたつです。
本章では、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁の特徴やその症状について解説していきます。

尿漏れの種類と症状

・ 腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁とは、お腹に力が入る際に尿が漏れる症状のことを指します。
腹圧性尿失禁は女性に多く、尿漏れの約半数が腹圧性尿失禁だとも言われています。
症状としては、くしゃみや咳をしたとき、笑ったとき、物を持ち上げたときなどの腹圧が上昇するときに少量から中量の尿漏れが生じます。
また、早歩きをしたときや階段を上り下りしたときなど、日常生活のふとした瞬間にも尿漏れが生じることがあるため、いつ尿漏れが起きるか分からないという不安がストレスにもつながりやすいと言えます。

・ 切迫性尿失禁

切迫性尿失禁とは、急に激しい尿意を感じ、トイレに間に合わずに尿が漏れる症状のことを指します。
通常は、排尿機能を制御する排尿中枢からの神経伝達によって膀胱の排尿筋を抑制し、尿意を我慢することができます。
しかし切迫性尿失禁の場合は排尿抑制の伝達が上手くいかなかったり、排尿筋が自発的に収縮したりして中量から大量の尿漏れを引き起こし
ます。
また、切迫性尿失禁は膀胱が過敏になり意思と関係なく収縮を起こす「過活動膀胱」と密接に関係しており、夜間頻尿(夜に何度も尿意で起きる)により睡眠の質が低下しやすいなどの特徴があります。

2 女性に多い尿漏れ(尿失禁)の原因

女性に多い尿漏れの原因には、加齢による骨盤底筋の衰え、妊娠・出産による骨盤底筋へのダメージ、加齢による膀胱機能の低下、ストレスや緊張などさまざまな原因が挙げられます。
原因を知ることは、尿漏れ改善への第一歩です。
まずは尿漏れを起こす原因を把握し、自身に当てはまるものがあるか確認しましょう。

加齢による骨盤底筋の衰え

加齢による骨盤底筋の衰えは、女性の尿漏れの代表的な原因のひとつです。
骨盤底筋は骨盤の底辺にハンモック状にある筋肉群のことで、膀胱や子宮を支える役割や、排泄を司る役割を担っています。
骨盤底筋は排尿に重要な役割を担っており、例えば尿を我慢するときには尿道括約筋などの筋肉が収縮して尿失禁を防ぎ、くしゃみや咳などをするときは尿道括約筋が機能して尿が漏れないようにしています。
しかし、加齢により骨盤底筋が衰えると、くしゃみや咳などの腹圧がかかる動作をしたときに尿道括約筋などが上手く機能せず、尿漏れ(腹圧性尿失禁)が生じてしまうのです。

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、女性で尿漏れを自覚している人は65歳以下は18.9%なのに対して65才以上では45.4%と割合が増加しています(1)
このように加齢により骨盤底筋が衰えることは、尿漏れにつながる大きな原因のひとつです。

骨盤底筋

(1)参考:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況

妊娠・出産による骨盤底筋へのダメージ

妊娠・出産による骨盤底筋へのダメージが原因で、尿漏れが起こることがあります。
出産後3年以内の女性の尿失禁と出産の関連性について調べた研究によると、産後に尿漏れを経験した女性は約30%、産後2ヶ月以降にも尿失禁を経験した女性は約35%(2)に上ります。
妊娠中は、子宮が大きくなって骨盤底筋に圧力がかかり続けることで骨盤底筋への負担が増加し、くしゃみや咳などをして腹圧がかかった際に尿漏れが起こりやすくなります。

また、妊娠中は「リラキシン」と呼ばれるホルモンの分泌量が増加する傾向にあります。
リラキシンには出産に備えて産道を広げるために骨盤まわりの靭帯や筋肉を緩めるという働きがあるため、その影響で骨盤底筋の筋力が低下して、尿漏れのリスクが高まります。
加えて出産時は、赤ちゃんが産道を通る際に骨盤底筋が引き伸ばされることで筋肉が傷つき、産後の尿漏れの原因となるケースがあります。

(2)参考:出産後3年以内の女性の尿失禁と出産との関連性|日本看護研究学会雑誌 Vol. 32

加齢による膀胱機能の低下

加齢による膀胱機能の低下も、尿漏れを引き起こす原因のひとつです。
加齢により膀胱の筋肉や神経の働きが低下すると、尿を溜める、適切なタイミングで排尿するなど、排尿をコントロールする機能が徐々に衰え
ます。
膀胱機能が低下すると、少量の尿でも尿意を感じる、排尿を我慢できずに尿漏れをしてしまうなどの症状につながります。
膀胱機能と同様に骨盤底筋も年齢とともに衰えるため、尿道を締める力が低下し、くしゃみや咳などの軽い腹圧でも尿漏れが起こりやすくなり
ます。

ストレスや緊張

ストレスや緊張も尿漏れを引き起こす原因となる場合があります。
人の身体はストレスを感じると交感神経が優位になり、全身が緊張した状態になります。
全身が緊張した状態になると膀胱周辺の筋肉もこわばりやすくなり、本来ならスムーズにコントロールできていた排尿機能が乱れてしまうの
です。
特に膀胱が敏感になりやすい人は、ストレスで過活動膀胱になり、尿意を突然感じたり、間に合わずに漏れたりすることがあります。
慢性的なストレス、強いストレスを抱えている場合は、骨盤底筋の緊張と弛緩のバランスが崩れて適切な排尿コントロールが難しくなったり、排尿と排尿抑制が協調して働かず尿漏れにつながったりするケースもあります。

3 尿漏れ(尿失禁)の対策方法

尿漏れは、適切な対策をとることで一定の改善効果が期待できます。
骨盤底筋をトレーニングで鍛えることで、適切に排尿をコントロールできるようになり、尿漏れ改善が期待できるでしょう。
本章では、骨盤底筋トレーニングのほか簡単にできる尿漏れ対策を紹介しますので、ぜひ実践してみましょう。

トレーニングで骨盤底筋を鍛える

衰えると尿漏れの原因になる骨盤底筋は、トレーニングで鍛えることができます。
骨盤底筋は身体の深部にあるため、はじめは意識しづらくトレーニングが難しいと感じるかもしれません。
ここでは比較的簡単なトレーニング方法をご紹介しますので、手順と注意点をみながら実践していきましょう。

撮影協力:SIXPADオフィシャルトレーナー ENA

トレーニングで骨盤底筋を鍛える
■ 骨盤底筋トレーニング1 座ったままできるトレーニング

椅子に座ったままできる骨盤底筋トレーニングは、骨盤底筋の動きを意識しやすいトレーニングのひとつです。
骨盤底筋のトレーニングを初めて行う方は、まずは座ったままできるトレーニングから始めてみましょう。

  • 1.

    椅子に深く座って両足を床につける。
    ※ひざを90度に曲げ、骨盤を真っ直ぐ立
    てる。

  • 2.

    肛門・尿道を「キュッ」と引き上げるようなイメージで骨盤底筋を締める。
    ※お尻やお腹の筋肉に力を入れないように注意しましょう。

  • 3.

    2の状態を約3秒間保ち、ゆっくりと力を
    抜く。
    ※呼吸を止めないように意識しましょう。

  • 4.

    2~3を10回繰り返す。

■ 骨盤底筋トレーニング2 寝ながらできるトレーニング

仰向けで寝た状態でできる骨盤底筋トレーニングは、身体への負担が少ないため、腰痛持ちの方や高齢の方でも無理なくできるメニューです。
就寝前後などに手軽に実践できるため、習慣化もしやすいでしょう。

  • 1.

    床やベッドに両ひざを立てた状態で仰向けに寝る。
    ※足は拳ひとつ分程度に開き、両ひざは90度よりやや深く曲げてリラックスした姿勢を作りましょう。

  • 2.

    肛門・尿道を「キュッ」と引き上げるようなイメージで骨盤底筋を締める。
    ※お尻やお腹の筋肉に力を入れないように注意しましょう。

  • 3.

    2の状態を約5秒間保ち、ゆっくりと力を
    抜く。
    ※呼吸を止めないように意識しましょう。

  • 4.

    2~3を10回繰り返す。

■ 骨盤底筋トレーニング3 立ったままできる骨盤底筋トレーニング

立った状態でできる骨盤底筋トレーニングは、骨盤底筋を鍛えながら姿勢も整えることができるトレーニングです。
慣れてくると、仕事や家事を行いながらできるようになるでしょう。

  • 1.

    足を肩幅に開いてまっすぐ立ち、両足に重心を均等に乗せた状態から、少し上体を前に倒す。
    ※背筋を真っすぐ伸ばし、猫背や反り腰にならないよう注意しましょう。
    ※バランスを保てない場合は、壁やテーブルに手をかけて実践しましょう。

  • 2.

    肛門・尿道を「キュッ」と引き上げる感覚で骨盤底筋を締める。

  • 3.

    2の状態を約5秒間保ち、ゆっくりと力を
    抜く。
    ※呼吸を止めないように意識しましょう。

  • 4.

    2~3を10回繰り返す。

身体を冷やさないように注意する

尿漏れ対策には、膀胱の過度な収縮を防ぐために身体を冷やさないことが大切です。
特にお腹や下半身を冷やさないように、腹巻きや靴下などを活用して下半身を温めましょう。
冷たいものやカフェイン、アルコールの摂取は身体が冷えたり利尿作用が高まったりするため、なるべく控えることをおすすめします。
入浴や適度な運動も全身の血行が促進されて冷えが解消されるため、尿漏れ対策につながるでしょう。
身体を冷やさないために、また身体を温められるように普段の生活も工夫してみましょう。

身体を冷やさない

4 まとめ

本記事では、女性の尿漏れ(尿失禁)として代表的な腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁について紹介したのち、尿漏れの原因や対策方法について解説しました。
尿漏れの原因は、加齢による骨盤底筋の衰え、妊娠・出産による骨盤底筋へのダメージ、加齢による膀胱機能の低下、ストレスや緊張などさまざまなものが挙げられます。
尿漏れは、骨盤底筋を鍛えることで改善効果を期待できます。
日々を快適に過ごすことができるよう、ぜひ骨盤底筋のトレーニングを習慣的に実践しましょう。